2015年2月17日火曜日

薬物乱用とオキシトシン

薬物乱用とオキシトシン

先日、学校薬剤師の仕事の一環として、”薬物乱用出前講座”を依頼され、担当小学校にて講義をしてきました。
6年生の児童70名ほどが、”薬物乱用!ダメ!絶対ダメ!”のビデオを見た後、私の話を熱心に聴いてくれました。

いけないこと、恐ろしいことがわかっているのに、薬物乱用に手を出してしまう心理は、無差別殺人や、愉快殺人、むしゃくしゃして誰でもよかった!などと青少年が殺人に手を染めてしまう事件と非常に共通しています。

こういった青少年の過去をたどってみると、幼児期に虐待にあっていたり、十分な愛情を受けられない環境であったために、前頭葉のある部分(社会性を培う部分や、悪いことを悪いと判断し、行動を抑制する部分)の成長がうまくいかず、線条体への働きかけが低下して、抑制できない行動パターンに出やすいことがわかってきています。

母親が我が子に授乳するとき、我が子がどんな状態であろうと丸ごと受け入れて、無条件の愛をもって、子どもを育てますが、そのときに母親にも、子どもにも、オキシトシンというホルモンが分泌され、リラックス、幸福感、自分は愛されているという気持ちを培う脳が形成されてゆくといいます。
言い換えれば、オキシトシンは、愛情ホルモンであり、人が相手の立場を思いやりながら、社会で人間関係を保ってゆくための大切な働きをしています。

愛情ホルモンをたっぷり受けて育っていないと、人への思いやり、自分への思いやりも形成されず、自暴自棄になってしまい、いけないと言われることに手を出してしまう心理が芽生えます。
このような青少年に対して、最近ではオキシトシンの点鼻噴霧により、社会性を担う脳を形成してゆく治療が試みられています。

私はこの日、6年生の皆さんに、”背中のほんわか撫で撫で”のお話をしました。
朝起きたら、顔を合わせた家族や友人に”おはよう”と声をかけながら、お互いに首~背中の肩胛骨と肩胛骨の間あたりを、やさしく撫でましょう!
”いつもありがとう””今日もお疲れ様やったね!”などのねぎらいの言葉をかけながら、撫でるのも効果があります。

実は背中の督脈沿いをさすると、セロトニンやオキシトシンなどのホルモンが分泌され、気持ちが穏やかになってくることがわかっています。
また、犬や猫などの動物を抱っこしたり、可愛がったりすることにも同様の効果があります。

こんなお話をしながら、講義の最後に、フルートで”ひこうき雲”を演奏しました。
”みんなが今日の大切な心のお話を忘れないように、愛情をこめて演奏します”と。
皆さん、一緒に口ずさんでくれて、”僕たち、私たちは、何があっても怖い薬物に絶対に手をだしません!”と誓ってくれる、思い出の1日になりました。

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